てらぺいあ社
「磁場の生体への影響」
p104〜106抜粋

8字形コイルを構成し、各々のリングに逆向きの電流を流すことにより標的をはさんでたがいに逆向きのパルス磁場を発生させると、8字の交点の真下の標的部分の電流密度を上昇させることができる。
これにより、標的部分の神経細胞集団を局所的に刺激しようとするものである。
もともと、この方法は電磁誘導方式ハイパサーミアにおいて、渦電流制御の一つの方法として脳の磁気刺激の発表より以前に考案されたもである。

三次元体積導体モデルによる渦電流分布の数値計算により標的部分の電流密度が標的以外の部分の電流密度にくらべて3倍程度大きくなることが示された。

いま、図2−30に示すように、8字コイルを刺激すべき標的の上に置き、8字コイルの8字の筆順に沿って瞬間的に大電流を流せば、標的をはさんで逆直パルス磁場が発生する。
これにより、5o以内の分解能で大脳皮質を選択的に刺激することが可能である。

ヒト大脳皮質運動野の特定部位を標的にして、コイルを標的上に置き、各々のコイルの面内におけるおける磁場密度が1Tオーダの強磁場を0.1〜0.3ms程度の短時間に発生させると、手や足の動きを引き起こすことができる。
たとえば、右大脳皮質の手の親指を司る部分を刺激すると、刺激20〜25ms後に、自分の意思とは無関係に左手の親指が動いてしまう。

左手母子外転筋に電極をつけ、右大脳皮質運動野を磁気刺激すると、図2-31に示すような筋電図波形が得られ親指の動きが見ることができる。
この位置をAとしよう。点Aより5o前後、上下に移動して脳を刺激しても親指は動かないし、筋電図も出てこない。
すなわち、5oの空間分解能で大脳皮質の標的磁気刺激ができている。

局所的に標的のみを刺激できるというこの磁気刺激のもう一つ重要な利点は標的部分の渦電流の方向を指定して、いわゆるベクトル刺激ができることである。
すなわち、標的部分の渦電流は8字の交点において、二つの円に接する接線方向に流れるので、電流の方向を制御して刺激することができる。

このような脳の標的かつベクトル的磁気刺激によって大脳皮質運動野の機能分布図が求められた。
図2-23にその一例を示す。
ここに、座標の格子間隔は5oであり、Y軸はほぼ中心溝に沿っている。
各部位における最適の刺激電流の方向、すなわち、神経興奮に適した渦電流の方向が矢印で示してある。
最適の刺激電流の方向が手と足の領域で逆方向になっていることは興味深い。

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この文章は磁気による刺激ですが、重要な事が書かれています。
脳をパルス磁場で刺激し、左手親指を動かすのに5oの分解能が必要だという事です。

電磁波で同じ事を行うとしたら、3oの波長くらいの電磁波が必要になるのではないでしょうか。

仮に電磁波を照射し、造影剤等を使用し、脳から何らかの情報を得る(透過させて脳を見るなど)とすれば、各領域が全て5oで仕切られていたと仮定して、少なくとも、3o以下の分解能を持った波長の電磁波でなければいけないという事になると思われます。

2010年3月6日作成
2010年5月28日更新