現在までの、主な、脳を計測する技術についてのまとめです。


脳機能イメージング
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B0
脳機能イメージング(のうきのうイメージング)とは、生きている脳内の各部の生理学的な活性(機能)を様々な方法で測定し、それを画像化すること、あるいはそれに用いられる技術。脳で行われる様々な精神活動において、脳内の各部位がどのような機能を担っているのかを結びづける研究資料になる。また、正常の状態と比べることで、脳の病気の診断にも用いることができる。

脳機能マッピング
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B0
脳機能マッピング(のうきのうマッピング)とは脳機能局在つまり脳の各部位がどのような働きをしているかを、あたかも脳を地図に見立てたかのように"マッピング"し、その結果から図などを作成することである。これにより脳の各部位ごとの機能を明らかにすることを目的とする。現在多くの脳機能マッピングは大脳皮質を対象としている。


MRIの原理について

一定周波数の電磁場のもとでは、ある種の原子核は電磁波の軸のまわりに、独楽のようなスピン現象をひきおこす。
これを核磁気共鳴(NMR)とよぶ。(核という文字が入っているが、放射能に関連したものではない)
これを人体に応用して、核磁気共鳴強度の空間分布を画像化したものを核磁気共鳴画像(MRI)という。
また、同じ原子核でもどのような分子の一部であるかによって、共鳴周波数にわずかなずれが生じることを利用して、組織の化学的組成をスペクトルとして検出しようとする、磁気共鳴スペクトロスコピーという方法もある。
MRIを施行するには強力な磁場が必要となる。

MRI
MRIの場合は、水の分子のなかにあるプロトンのNMRによって生じる信号を、コンピュータ断層法(CTスキャン)の方法で画像化したものである。
脳では神経細胞の多い灰白質と軸索の多い白質の境界が明瞭に区別できる。

機能的MRI(fMRI)
一般のMRI検査では脳の構造を知るだけであったが、血液中のヘモグロビンの酸化還元状態を利用すると、血流量の変化を画像化することができる。
これを機能的MRIという。
赤血球中のヘモグロビンは肺で酸化され酸化ヘモグロビンとなり、組織で酸素を渡して、自身は還元ヘモグロビンとなる。
還元ヘモグロビンは酸化ヘモグロビンよりも磁化しやすいので、ごく短時間でスキャンすると信号強度に差が出来る。
これを原理として脳の血流量の変化を画像化するのである。
脳の血流量は神経活動にある程度相関しているので、最終的には特定の脳領域の活動を知ることができる。
十分な解像度を得るためには、強い磁場が必要となるが、特定の刺激に対する脳の反応を調べるのに適している。
そのため、この方法を用いた脳の高次機能の解析が進められている。

MRS
プロトンが水分子中にあるか、あるいはグルタミン酸などのアミノ酸分子中にあるか、などによって生じるわずかな共鳴周波数のずれを横軸とし、縦軸に信号の強度をとると、生体中にあるこれらの分子の濃度を推測できる。
この方法は生体をまったく侵襲することなく、その成分を測定できる方法である。
実際には、プロトンだけではなくリンや炭素などのスペクトルが応用されつつある。
現時点ではMRIよりもさらに強力な磁場が必要なことや、脳の特定領域からの信号を得ることがむずかしいことから、研究段階にとどまっている。

脳と生体統御98
放送大学

参考
○核磁気共鳴画像法
http://ja.wikipedia.org/wiki/MRI
○fMRI
http://ja.wikipedia.org/wiki/FMRI
○MRスペクトロスコピー
http://ja.wikipedia.org/wiki/MR%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC

脳磁図(MEG)の原理

神経細胞の活動は電気的な情報によって神経細胞を伝わっていく。
この電気的な活動には、神経細胞を伝わっていく活動電位とシナプスでのシナプス電位がある。(神経細胞上に数多くあるシナプスでのシナプス電位の総和が、ある一定の値を超えると活動電位となる。)
大脳皮質の神経細胞は解剖学的にも一定の配列を持って並んでおり、電気的にも集団的に活動することが知られている。
この活動を頭皮上から観測したのが脳波とよばれるものである。
ところで、この集団的な神経細胞の電気活動があれば、脳内に一方向の電流が流れる。
このとき、電気物理学の原理によれば、微弱ではあるが磁場が発生するはずである。
実際、この時の磁場の強さは10の-13乗テスラと見積もられる。
地磁気の10の-5乗テスラに比べると、1億分の1にすぎない。
しかしこの微弱な磁場も超伝導現象を利用した超伝導量子干渉計SQUIDを用いれば観測できる。
これをMEGとよんでいる。
MEGは磁気を測定するものなので、脳波と違って頭蓋骨や皮膚などによって減衰することはない。
したがって、脳のどこに磁場が発生しているかを正確に推定することができる。
しかも、脳から出てくる磁気を測定するだけなので、ヒトに対してはまったく害を及ぼさない。
ヒトは一定の視覚などの知覚の刺激を受けると、集中的な神経活動が生じる。
このときMEGの信号を検出すると、刺激後、どれくらいの時間で脳のどのようなところで集中的な神経活動が生じたかわかる。
しかし、一度期に多数の脳部位が活性化し、磁場の生ずる部位が多数あるような場合は、誤作が生じやすいので、複雑な脳の高次機能に対しては慎重な検討が必要である。
MEGは脳の活動をきわめて短い時間で、しかもかなり空間的な精度で脳内の位置を特定することができる。
実際にはMEGで得られた情報を、MRIなどの画像の上に重ねて示すことが多い。

脳と生体統御98
放送大学

参考
○脳磁図
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E7%A3%81%E5%9B%B3


CTの原理です。

コンピュータ断層法は、X線を身体のある断面について360度の方向から当てて、その透過率を測定し、コンピュータを用いてもとの断面X線の吸収度を計算し、画像化するものをいう。
この方法は1970年代にイギリスのハンスフィールドによって実用化された。

X線の吸収度の高い造影剤を投与して組織に移行させれば、血流量の変化を高いコントラストをつけて表すことができる。
実際に脳梗塞や脳腫瘍の診断の際などは、この方法が使われる。

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参考
○コンピュータ断層撮影
http://ja.wikipedia.org/wiki/CT


ポジトロン断層法(PETについて)

脳の機能を画像化する技術がPETである。
PETは陽電子(ポジトロン)を放出する放射性同位元素で標識した薬物(トレーサー)を用い、脳の血流量・酸素代謝・糖代謝の程度や受容体の分布などを画像化することができる。
トレーサーは生体内に取り込まれると、崩壊して陽電子を放出する。
この陽電子はただちに周囲の電子と衝突して消滅し、180度の向きに2本の放射線を放出する。
この放射線は組織を容易に透過するので、体外に検出器を置くことによってその信号を検出できる。
この信号をX線をCTのような断層撮影の原理を援用すると、トレーサーの体内分布を断層像として得ることができる。
分解能はCTやMRIほど高くなく、画像の鮮明度はそれらに劣る。
また、トレーサーは寿命の短い放射線核種を用いるので、その合成には小型のサイクロトロンと精製技術が必要となる。
そのため費用がかかり簡便なシステムとはいいがたい。
しかし、定量性に優れることや、適当なトレーサーを合成すればいろいろな脳の機能を調べることができるなどの他にはない長所を持っている。
一般に糖代謝の高い部位や、血流量の高い部位は神経活動も亢進していると見てよいので、糖代謝や血流量の変化は、神経活動のよい指標となるのである。
神経伝達物質の受容体もこのPETの技術で測定することができる。
適当なリガンドを用いれば、特定の受容体の分布やリガンドとの親和性などを生きたままの脳で調べることができる。

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○ポジトロン断層法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3%E6%96%AD%E5%B1%A4%E6%B3%95


○シングルフォトン断層法(SPECT)

SPECTではガンマ線を放出するトレーサーを用いる。
これらは原子番号の大きいテクネシウムやヨウ素などが多く、半減期もそれぞれ6時間と13時間なので、集中的に特定の施設で製造すれば、一般の病院でも医薬品として利用できる。
SPECTの欠点としては、テクネシウムやヨウ素などの原子量の大きい原子で標識するので、標識された分子の構造が変化しやすく、プローブとして適当な化合物を設計することがむずかしいこと、一度のスキャンにPETより時間のかかること、定量性にかけることなどがある。

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○単一光子放射断層撮影
http://ja.wikipedia.org/wiki/SPECT


○脳波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%B3%A2%E8%A8%88
脳波(のうは、Electroencephalogram:EEG)は、ヒト・動物の脳から生じる電気活動を、頭皮上、蝶形骨底、鼓膜、脳表、脳深部などに置いた電極で記録し観察する方法である。

デルタ波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF%E6%B3%A2
デルタ波(でるたは、英: Delta wave)は、脳波計(EEG) によって計測される、周波数が 1 Hz から 4 Hz で高振幅の脳波であり、徐波睡眠 (slow-wave sleep) と関連付けられている。
デルタ波はノンレム睡眠時のステージIV で最も頻繁に検出され、計測される脳波の 50% 以上になる。
健康な成人の覚醒時には、デルタ波の活動の大部分は一般的に計測されない。しかし、複数の研究において、陶酔やせん妄状態の成人や、認知症や統合失調症[5]と診断された成人において、デルタ波が増加していることが示されている。

アルファ波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E6%B3%A2
アルファ波(アルファは、α波)はヒト・動物の脳が発生する電気的信号(脳波)(脳電図)のうち、8〜13Hz成分のことをさす。
安静(リラックス)・閉眼時の脳波においては、他の周波数成分に比べてアルファ波の占める割合が高く、肉眼でも観察され、基礎律動の主成分をなす。アルファ波の発生機序については様々な仮説が提案されているものの未だに不明である。しかし脳や意識の状態によって変化することが経験的に知られているため、意識障害、認知症、精神疾患、睡眠障害などの診断補助・状態把握に用いられることがある。
頭皮上電極による脳波では、後頭部を中心として観察される。しかし後頭葉以外でもアルファ帯域(8〜13Hz)の電気的振動が発生しており、中心溝周辺のものはミュー(μ)律動、側頭葉周辺のものはタウ(τ)律動、二次感覚皮質周辺のものはシグマ(σ)律動と呼ばれることがある。ミュー律動は体性感覚・運動などと、タウ律動は聴覚処理などと、シグマ律動は体性感覚処理などと関連があるといわれている。

ベータ波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%BF%E6%B3%A2
ベータ波(べータは、英: Beta wave)または、ベータ律動(ベータりつどう)は、脳活動の周波数帯を表す言葉で、12 Hz (毎秒 12 サイクル) 以上のものを指す。ベータ状態は通常の覚醒時の意識と関連付けられている。
低振幅で複数の変化する周波数のベータ波は能動的で活発な思考や集中と関連付けられている。

ガンマ波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%9E%E6%B3%A2
ガンマ波(がんまは、英: Gamma wave)は脳波のパターンの1つで、知覚や意識に関連付けられている。ガンマ波は神経細胞集団が電気信号を毎秒約 40 回 (40 Hz) の周波数で放出した際に発生するとされているが、大抵は 26 Hz から70 Hz ほどまでとされる。高次認知活動は低い周波数のガンマ波が突然 40 Hz 程まで倍化した際に生じるとする研究もあるが、24 Hz 以上の脳波をガンマ波とする定義もある。覚醒時、及びレム睡眠時に生じる低電位速波新皮質活動 (low voltage fast neocortical activity : LVFA) の際にガンマ波が常に発生しているとされている。


○近赤外線分光法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%B5%A4%E5%A4%96%E7%B7%9A%E5%88%86%E5%85%89%E6%B3%95
医科学・神経科学 - 近赤外線は皮膚や頭蓋骨によっても完全には遮られず、生体組織に含まれるヘモグロビンやミオグロビンは酸素と結合した時としない時とで近赤外領域での吸光特性が異なる。これらの性質を利用して、生体の非侵襲計測に利用することができる。1940年代にGlenn Allan Millikan[1]は、in vivoでの血中ヘモグロビンの酸素飽和度の計測を試みた。この方式は1970年代に青柳卓雄によってパルスオキシメーターに発展し、近赤外線を用いた経皮的動脈血酸素飽和度計測を実用に供することが可能となった。また、近年では大脳皮質における血流量、酸素消費などの計測に発展している。

光で捉える脳機能 近赤外イメージングについて
http://www.med.shimadzu.co.jp/products/om/qa_index.html
光脳機能イメージングのスペクトラテック
http://www.spectratech.co.jp/Technology.html

○X線医療診断
光子発生技術研究所
http://www.photon-production.co.jp/application/medical.htm

浜松ホトニクス
http://jp.hamamatsu.com/products/x-ray/pd039/index_ja.html


2010年3月6日作成
2010年4月8日更新